財産分与について③
今回は,財産分与の内容が決定した後の手続について,簡単に紹介します。
相手方にお金を払ってもらう場合以外の分与は,財産の種類によってその後の各種手続を行います。
例えば,不動産の名義変更であれば,財産分与を原因とした登記移転手続の申請です。生命保険の契約者変更する場合には,保険会社にその旨連絡をすると,所定の書類を提供してくれるはずです。
自動車の名義変更は,軽自動車とそれ以外で手続の場所が異なることに注意が必要です。軽自動車以外の車の名義変更が運輸支局で行いますが,軽自動車は軽自動車検査協会で行います。
相手方の協力が必要なことも多いので,あらかじめ手続を確認しておいて,財産分与の内容を決めるのと同時に協力の約束も取り付けておくと安心ですね。
なお,不動産や自動車の名義変更は,調停調書・審判書・判決書などに必要な情報が記載されていれば,譲り受ける側が単独で手続できます。
では,相手方が財産分与でお金を払うと約束したにもかかわらず,支払いをしない場合には,どうしたらいいでしょうか。
このような場合には,相手方の財産を差し押さえる「強制執行」の手続を検討しましょう。ただし,強制執行をするには,その内容が調停で成立したものであることや公正証書で残っているなどが前提となります(法律用語で「債務名義」といいます。)。相手方の給与(の一部)や不動産などの資産が強制執行の対象となります。
ただし,相手の資産がわからなければ,強制執行はできません。そういった場合には,民事執行法で定められた手続である,「財産開示手続」の利用も考えられます。これは,調停等で定めた養育費や財産分与等の支払いをしない義務者を裁判所に呼び出して財産を開示させる手続です。正当な理由なく裁判所に出頭しない場合には,刑事罰も科せられるようになりました。
財産分与は「決めたら終わり」ではありません。その後の手続や実際に相手方が約束を守るのかどうかということを事前に考え,それを踏まえて財産分与の内容を決めることも重要です。